episode 0 「点の自分を愛でる」
果てしなく見える道のりも、
終わってしまえばただの夢。
どこかでシャッターを開ける音がする。誰かの家も1日が始まっている。
車のフロントガラスが凍る朝。床に散らばるおもちゃが、昨日の名残を残す。
今日も片付けできずに、家を出る。
いつもの日常を、ただただ過ごし切る。
行ったり来たり、昨日の繰り返しが、また今日も。
明日も変わらない毎日を望んでいたはずなのに。
この日常が続けられるようなマニュアルがあったらいいなって思っていたのに。
大抵「腹をくくれる」人間は、そうせざるを得ない環境にあって、
闇雲に、でも、 がむしゃらに、 一旦見つめてやり遂げて。
私はずっとずっと、校庭を回り続けている。
変わらない景色を見続けている。
全てを投げ打つ覚悟もないくせに。
それができる「あの人」への 尊敬と憧れは、 どうにもこうにも隠せない。
点の自分を愛でる
いつかのノートを開く。
何年の前の、私のノート。
走り書きでわかりにくい。
それでもこれは、まぎれもなくあの時の私の文字の羅列。
恥ずかしくなるような自分語りも、
夢中になっていたアニメの名言も、
あらゆる「心に残ったもの」が散りばめられたそれは、
今よりらせん階段の下の方にいたあの頃の私の言葉。
あなたの中に生まれた気持ちや感情は、いつの間にか蒸発して消えていくように、
本当に本当に、なかったことになってしまう。
あなたが今、自分自身と向き合うという事は、 それを積み重ねて未来の自分にバトンを渡すということ。
不思議。
あの頃の私が、今の私を救ってくれている。
ステージが下だと、そう思っていた「あの頃の私」が。
私たちはずっと、らせん階段の真ん中にいる。
果てまで続く、らせん階段の真ん中に。
今日、この瞬間のあなたを紡ぐ。
らせん階段が続く限り、残り続ける物語を。
エッセイ「らせん階段の真ん中で」のプロローグです。
「今」という「贈りもの」を 存分に大切にできる毎日になりますように
この想いを真ん中に置き、みなさんの日常の「今」に寄り添うことができる作品を紡いでいきたいと思っています。
次回の更新もどうぞお楽しみに。